一つの街を区切る境界
今まで「ベルリンの壁」跡地に整備された「壁の道」を辿るルートは東へと向かってきました。ですが、ここからは北へと向かうことになります。それと同時に現在の壁の位置が異なるものになります。今まで辿ってきた壁が位置するのは、現在のベルリンとブランデンブルク州の境界となる部分。一方で、ここから辿ることになるのはベルリンの西地区と東地区の間にあった壁となります。それが意味するのは「西側」も「東側」も現在のベルリン。つまり、ここからの壁は一つの街を切り裂いていた壁なのです。

市内に現れる自然保護区
今まではベルリン市とブランデンブルク市の境界を走ってきましたが、ここからはベルリン市内へと入っていきます。しかし、驚いたことに市内に入っても今までと風景は大きく変わることはありません。「西側」にも「東側」にも美しい緑が広がっています。この場所は「ルードー・アルトグリーニッケ景観公園(Landschaftspark Rudow-Altglienicke)」という自然保護区に指定されており、池や湿地帯が広がっているのです。また公園内では水牛が飼育されているなど、ベルリンでも珍しい場所となっています。

自然保護区に併設する高速道路
公園の湖に水鳥が浮かび、そこへと飛来する鳥たちに目を奪われます。自然の美しさに感動しながらも、それと同時に感じられるのは、わずかな違和感でした。市内でありながらも美しく整備された自然保護区。そして聞こえてくる不思議な音。それは車の行き交う都市の音です。そのまま「壁の道」を走っていると、その理由がわかりました。実は自然保護区の地下には高速道路が走っており、それが自然保護区の向こうで地上へと現れるのです。ここでは自然保護区と高速道路が同居しているのです。

壁跡地に伸びる高速道路113号
ここで登場するのは高速道路113号で、「ベルリンの壁」跡地の上に10キロ以上にわたって敷かれているもの。自然保護区や周辺にある公園は、その一部の上や横に広がっているのです。そもそも「ベルリンの壁」は一般的に蛇行することなく真っ直ぐに築かれていました。そのため東西統一後に壁跡地に残されたのは直線に伸びる空き地です。それはベルリンの市内と郊外を結ぶ高速道路に相応しい敷地となったのです。このような高速道路113号は、市内とベルリン唯一の空港であるシェーネフェルト国際空港を結ぶ大動脈として、今では重要な役割を果たしているのです。

壁跡地の利用法
それでは、なぜ自然保護区や公園が高速道路の上や横に造られたのでしょうか。公園や自然保護区が果たすのは、高速道路建設で損なわれる自然を補完する役割でした。また高速道路の騒音を軽減する役割も期待されているようです。こうした理由から、高速道路が公園や自然保護区と組み合わされて計画されているのです。「ベルリンの壁」跡地は、自然へと戻る場所もあれば、再開発されているところもあります。ですが自然を維持する形で大規模再開発を行った場所は、私が知る限りではここだけでしょう。いずれにせよ「ベルリンの壁」跡地がいかに利用されているかという点で、特に印象に残る場となりました。

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