コロナ・ウイルスの流行で、ドイツでの日々の暮らしに大きな変化が起きました。気軽に友人に会えなかったり、大きなイベントに参加することができない状態に陥ってしまったのです。
海外で暮らすと、こうしたライフスタイルの変化はストレスを生み出すもの。散歩に出かけたり、週に数回ジョギングをするなどストレスを解消する方法を模索する中、解決策になるかもしれない方法を見つけました。
それは自分が住むベルリンの街を自転車でサイクリングすること。こうして街の中を自転車で乗り回すうちに、あてもなくサイクリングするのでなく、目標があればと感じるようになりました。そして思い付いたのが「ベルリンの壁」を自転車で辿ることだったのです。
ベルリン西部を囲む150キロの「ベルリンの壁」
「ベルリンの壁」は1960年代初頭に東ドイツに住む人々が西ドイツに逃れないように築かれたものです。私自身もベルリンに住む前に勘違いしていたのですが、東西ドイツの中心部にベルリンがあり、そのベルリンの中心に壁があったのではありません。
実際には東ドイツの中にベルリンがあり、ベルリンの西側を取り囲む形で、「ベルリンの壁」が築かれたのです。簡単に言えば、東ドイツ内の陸の孤島であるベルリンの西側部分を壁で取り囲んでいたのです。
その総延長はおよそ150キロで、自転車で辿ることは難しくありません。その多くが郊外に位置しているため、気持ちの良いサイクリングを楽しむこともできそうです。
整備された道やアプリも走破の助けに
「ベルリンの壁」をサイクリングで楽しみながら訪れる理由には「壁の道」と呼ばれる壁の跡地に整備された道の存在もありました。道無き道を走ることは厳しいですが、壁を辿るための道があるなら、壁の場所を探し回る必要はありません(と思っていたのですが、実際に巡ってみると、探さないとわからない場所もありました)。
それ以外にも、「ベルリンの壁」の位置を指し示すアプリもあり、この存在も心強いものでした。アプリでは地図上のポイントに情報が掲載されているため、壁が引き起こした出来事を知ることができます。そして壁を巡るサイクリングが単なるストレス解消にならずにすんだのです。
総延長約150キロのベルリンの壁跡地
総延長約150キロと聞くと、2、3日で踏破できると思う人が多いでしょう。しかし実際に私が走破したのは始めてから1年半後のことでした。壁のあった場所を走り抜けるのであれば、2、3日で済みます。
しかし写真を撮ったり、壁の歴史を確認したり、道に迷ったり、壁を探したりと、壁巡りのサイクリングを存分に楽しむことになってしまったのです。ですので1回あたりの距離は数キロ程度で、長距離を走ったのは数回でした。
そもそもサイクリングを楽しむことが前提だったので、数日で終わらすのは勿体ないと考えていたこともありました。こうして夏から秋にかけて、天気の良い週末に十数回に分けて「ベルリンの壁」を巡ることになったのです。
「ベルリンの壁」のアプリ(壁のあった位置をマップ上で表示、壁にまつわるエピソードを記載。)
「壁の道」 ドイツ語では「Mauer Weg」。「ベルリンの壁」跡地に整備されたサイクリングロード。湿地帯など走行不能なエリアや、私有地になった場所を避けているため、全てのルートが「ベルリンの壁」跡地に作られているわけではありません。