ベルリンと言えば、多くのアーティストが住むアートの街だと思い浮かべる人は少なくないでしょう。ですが 、ベルリンは建築の街でもあるのです。というのもベルリンには多くの重要な建物が建てられているからです。例えば 20世紀のモダニズム建築もそのうちの一つです。
ベルリンにはモダニズム建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエが手がけた建物が幾つかあります。今回紹介したいのは美術館として利用されているレムケ邸(ミース・ファン・デル・ローエ・ハウス)です。
モダニズム建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエ
1920年代に建築の世界では新しい動きが起きていました。それまで建物に装飾を施すのが一般的でしたが、近代化に歩調を合わせて合理性や機能性を取り入れた建物が登場したのです。こうした動きはモダニズム建築と呼ばれてる、多くの建築家が装飾を排したシンプルな建物を手がけるようになりました。
ドイツ出身のミース・ファン・デル・ローエもその一人で、モダニズム建築の代表的な建物を生み出しており、近代建築の三大巨匠と呼ばれています。そんなミースですが、ドイツの首都ベルリンに幾つか建物を建てており、今回紹介するレムケ邸もその一つです。
ミース・ファン・デル・ローエが校長も務め、モダニズム建築に影響を与えたバウハウスについては、こちらの記事で紹介しています。
ベルリン郊外に建つ小さな建物
ベルリン郊外にある閑静な住宅街に広がる湖。自然豊かな湖のほとりにレムケ邸は建てられています。住宅からは庭越しに湖を眺めることができ、自然を楽しめる建物とのなっています。
こちらの建物が建てられたのは1932年から1933年にかけて。当時ミースは合理主義や機能主義の美術教育を押し進めたバウハウスの校長の職に就いていました。そのためバウハウスの影響が色濃く現れている建物と言えるでしょう。
伝統とモダニズムの融合
レムケ邸は平家の小さな建物で、庭を囲むようにL字型になっています。そんな建物の外観で目に付くのは茶色の煉瓦の外壁。モダニズム建築と言うと、コンクリート、ガラス、鉄骨といった素材を多用することで知られていますが、ここでは煉瓦という伝統的な素材が使われています。
その一方でガラス窓は大きく取られており、また建物の外観は非常にシンプルになっています。そのため伝統的な素材を使いつつも、モダンな建物に仕上げられていると言えるでしょう。
明るく開放感のある内部空間
平家で小さな建物であるレムケ邸ですが、その内部に入ると驚かされることになります。なぜなら、外観とは対照的に広く感じられるからです。その理由は南側と西側に取り付けられている巨大なガラス窓。壁の大部分がガラス窓になっているため、庭や湖の風景を取り込んでいます。そのため壁の圧迫感が無くなる一方で、屋内空観が外へと広がっているように感じられるのです。
またガラス窓は外光を取り込み、明るい広々とした空間も生み出しています。このようにレムケ邸ではそれまでにないような住空間を生み出したのです。
新ナショナルギャラリーとレムケ邸
このような建物ですが、ベルリンにあるミースが手がけた新ナショナルギャラリーと合わせて訪ねると面白いかもしれません。新ナショナルギャラリーはミースの晩年期にあたる1968年に建てられたものですが、レムケ邸とは大きく異なるものとなっています。
新ナショナルギャラリーは鉄骨構造による巨大な建物です。規模や外壁の素材で対照的な二つの建物ですが、ガラスを使った明るく広々とした空間の点で変わることはないのです。こうした共通点はベルリンにある二つの建物を訪れてこそ、わかるでしょう。
美術館として開放されているレムケ邸
住宅として建てられたレムケ邸は、今ではミース・ファン・デル・ローエ・ハウスという名前の美術館になっています。ここではミースが実現したモダンな空間で美術作品を楽しむことができます。このような美術館ですが、なんと入場料は必要ありません。
無料でありながらも素晴らしい建築空間、そして美術作品を楽しむことができます。ですので建築ファンでなくとも、ベルリンで訪れることをお勧めしたい場所です。
ミース・ファン・デル・ローエが手がけた新ナショナルギャラリーについては、こちらの記事で紹介しています。
ミース・ファン・デル・ローエ・ハウス/レムケ邸(Mies van der Rohe Haus)
アドレス: Oberseestraße 60, 13053 Berlin
開館時間: 11:00 〜 17:00
休館日: 月曜日
入場料: 無料
Web-Site:ミース・ファン・デル・ローエ・ハウス
(2024年5月確認)