ドレスデンと言えば、何を思い出すでしょうか?ドレスデンはドイツ三大クリスマスマーケットの一つの「シュトリーツェルマルクト」が開催されることで有名です。そのためクリスマスマーケットの街という印象を持つ人がいるかもしれません。ドレスデンはかつてザクセン王国の首都として栄えており、ドレスデン城やツヴィンガー宮殿などの歴史的な建物が建てられました。
ドレスデンの旧市街を歩くと、そんな多くの歴史的建物を目にすることになるでしょう。その中でも一際目を引くのが聖母教会です。それはドレスデンのシンボル的な存在の建物で、重要な意味を持っています。こちらの記事ではドレスデンの聖母教会について、なぜ重要な意味を持つのか、その理由を紹介したいと思います。
ドレスデンの旧市街にある聖母教会
ドレスデンの街はチェコ国境から数十キロの場所に位置しており、ドイツ東部を代表する都市として知られています。街の中心はエルベ川沿いにあり、そこにザクセン王国の宮殿などが集まっています。川岸に建つドレスデン城やツヴィンガー宮殿などの重要な建物を中心にして、ドレスデンの旧市街は発展していったのです。
そんな旧市街の中心部にあるのがドレスデンの聖母教会です。古い建物が集まる旧市街では背の高い建物となっているため、教会のドーム屋根を簡単に見つけることができるでしょう。
街のシンボルであるドレスデンの聖母教会
ドレスデンの聖母教会は、その歴史を11世紀に遡ることができます。現在の形の教会は18世期半ばに建てられており、ルター派の教会として建てられました。教会の建物はドレスデンの街並みのシンボルとも言えるでしょう。
ドレスデンは、その街並みが多くの絵画に描かれています。ドレスデンを描いた絵画の中でも特に有名なのがベルナルド・ベッロット(通称カナレット)の作品です。彼はエルベ川越しに見えるドレスデンの風景を描いており、聖母教会はその中心に聳えています。今ではこの作品と同じ視点をカナレットビューと呼び、ドレスデンを紹介する際に、こちらの教会を中心にした風景写真が使われるほどなのです。
戦争によって廃墟となったドレスデンの街
このような聖母教会ですが、実際に訪れてみると、不思議なことに気付くでしょう。教会の外壁が白く、とても新しく見えるのです。実は聖母教会は第二次世界大戦によって破壊されており、現在の建物は近年に再建されたものなのです。
第二次世界大戦の末期、1945年の2月にドレスデンの街は連合国によって激しい爆撃を受けることになりました。それによって街の8割近くが破壊され、焼け野原となったのです。街の中心部にあった聖母教会も破壊を免れることなく焼け落ちました。そして近年に再建されるまで、教会は廃墟となったまま街の中心部に残されたのです。
教会の再建
ドレスデンの聖母教会は一部を除いて完全に崩れさり、再建は簡単ではありませんでした。最終的に実現したのは21世紀に入ってからのこと。そこでは過去の建物を忠実に再現する形で再建されました。
ただし新しく再建したのではなく、瓦礫となった石材を本来の位置を特定して利用しています。実際に3000片を超える瓦礫となった石片が教会の再建に使われました。そのため建物の外観を見ると、所々黒ずんだ古い部分を見つけられるでしょう。それこそが、かつて教会に使われ、本来の位置にはめ込まれたものなのです。そのため本教会は過去の歴史を取り込んだ建物と言えるでしょう。
再建されたドレスデンの聖母教会の意味
ドレスデンの聖母教会ですが、ただ過去の建物を忠実に再建したわけではありません。ここでは黒く変色した建物の外壁が、教会が戦争によって破壊されたことを気付かせてくれるはずです。
それは戦争により破壊され、そのままの姿で残された広島の原爆ドームや、ベルリンのカイザー·ヴィルヘルム記念教会の様に、戦争の悲惨な記憶を今に伝える場所なのです。現在では、ドレスデンの空襲が起きた2月13日に多くの市民が教会の前や旧市街に集まり、手を繋いで人間の鎖を作ります。そして戦争の悲劇を繰り返さないことを願うのです。
戦争の悲劇と復興を伝えるドレスデンの聖母教会
ドレスデンの聖母教会は、街のシンボルとも言える重要な場所です。そして戦争によって破壊され再建された教会は、戦争の悲惨さと平和の意味を伝える場所でもあるのです。そのため、ドレスデンを訪れるのであれば、見逃すことのできない場所です。ドレスデンでぜひ訪れてみて下さい。
ドレスデンの聖母教会 / Frauenkirche Dresden
アドレス: Neumarkt, 01067 Dresden
入場料: 無料
開館時間: 10:00-11:30と13:00-17:30 / 月〜金、スケジュールにより異なる / 土日
Web-Site:ドレスデンの聖母教会
ドレスデンには様々な観光スポットがあります。こちらの記事ではそんな観光スポットについて紹介しています。