ドイツに点在する世界遺産の多くは、壮麗な大聖堂や中世の面影を残す旧市街など、数百年もの歴史を持つものです。ですが、その中には20世紀のものも含まれているのです。それらは短い歴史の中でも、歴史的に文化的に重要なものとして評価されて、世界遺産に指定されているのです。
今回紹介するのも、そんな世界遺産の一つです。それは20世紀初頭に建てられた「ファグス工場」です。工場という建物でありながらも、文化的に重要な建物と見なされており、今なお多くの人が、この工場を見るために、観光地でもない町を訪れるのです。
今回は、そんな「ファグス工場」について、紹介したいと思います。
ドイツ中部に位置する「ファグス工場」
「ファグス工場」が位置するのは、ドイツ中部のニーダーザクセン州にあるアルフェルト(Alfeld)という町です。最寄りの大都市はハノーファーで、そこからはドイツ鉄道(RE/RB)で約40分ほどで訪れることができます。建物は線路のすぐ脇に建てられており、アルフェルト駅から徒歩10分ほどの場所にあります。
駅周辺には他にも工場が建てられており、町は観光地のような印象はありません。「ファグス工場」が町一番の見どころであるため、周辺にある観光地、例えば、世界遺産のあるヒルデスハイムやゴスラーといった観光都市と組み合わせて訪れると良いでしょう。

若きモダニズム建築の巨匠が手がけた建物
建物が建設されたのは1911年で、建物の設計を行ったのはヴァルター・グロピウスとアドルフ・マイヤーの2人です。グロピウスはモダニズム建築の巨匠と言われていますが、当時の二人は20代と30代の若者でした。「ファグス工場」の設計を依頼した依頼主は新しく斬新な建物を求めており、新時代の建築を担う二人に出会ったのです。
このようにして実現した「ファグス工場」は時代を先取りした建物となり、今ではモダニズム建築の原点として建築史に名を残しています。そのため人類の文化遺産として世界遺産にも登録されているのです。

時代の先駆けとなった「ファグス工場」
「ファグス工場」の主要施設は、本館、生産棟、倉庫から構成されています。もともと別の建築家が進めていた計画をグロピウスたちが引き継いだため、一部の構造には前任者の考えも反映されています。 特筆すべきは本館で、前任者のデザインから変更を加えて、壁一面に大きなガラス窓をはめ込むことで、明るい室内空間と軽やかな外観を実現しました。
これは当時の主流だった重厚な建築様式とは一線を画すものでした。後にグロピウスが手がける「デッサウのバウハウス校舎」にも取り入れられ、ガラス窓が壁面を覆い、美しく明るい空間を実現しています。バウハウスの校舎はモダニズム建築の一つの象徴的な存在ですが、その原点とも言えるものをここで見ることができるのです。

充実した展示内容
現在も靴型の工場として稼働しているため、敷地内に入る際は入場ゲートで入館証を受け取る必要があります。そのため本館や生産棟などの実際に利用されている建物は、ガイドツアーを除いて立ち入りが制限されています。
ですが、かつての倉庫を利用した展示スペースは見学することができ、ここではバウハウスの歴史や工場の建築について展示で紹介されています。そのなかには実際に使用されていた家具なども展示されており、デザインや歴史に興味がある方には見応えがあるでしょう。

建築だけでなく靴の展示も
建築に重点が置かれた展示ですが、その一方で靴型の工場であることから、靴についての展示も充実しています。靴をモチーフにした美術作品から、歴史的な資料まで幅広く網羅されています。
特に目を引くのは、有名スポーツ選手のサイン入りシューズや、実際に着用されたスパイクのコレクションです。中にはドイツ代表として長年活躍した名選手のものもあり、建築に詳しくない方や、家族連れでも十分に楽しめる内容となっています。もし家族で訪れる場合には、無理に建築の展示に付け合わせずに、靴の展示を楽しんでもらうこともできるでしょう。

ぜひ訪れてほしい世界遺産の工場
「ファグス工場」は、世界遺産に指定されている現役の工場という特別な場所です。そんな場所は、モダニズム建築の先駆けとなったものであり、今でもその先見性を感じることができるでしょう。
建築好きの方はもちろん、スポーツやデザインに興味がある方にとっても、ここは楽しめる場所です。そのため旅行先で世界遺産を訪れる人にとっては、ぜひ訪れてほしい場所になっています。ぜひモダニズムの建築の先駆けとなった「ファグス工場¥に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。そこでは建築の面白さを感じられると思います。

ファグス工場 / Fagus-Werk
アドレス:Hannoversche Str. 58, 31061 Alfeld (Leine)
開館時間:10〜17時(11月から3月の期間は10〜16時)
休館日:1月1日、12月24、25、31日
入場料:11ユーロ
公式ページ:ファグス工場










