2025年11月にドイツ東部の都市ケムニッツ近郊に、新しい現代アートの展示施設が誕生しました。それは現代アートのアーティスト、ジェームズ・タレルの作品を設置するものです。設置されたのは大型の体験型の作品で、一般的な美術館では見ることができないような作品体験を楽しむことができるものです。
そのため現代アートファンだけでなく、アートに興味をも他いない人でも楽しむことができるでしょう。こちらの記事では、そんなドイツに新しく誕生した特別な展示施設や、展示作品について紹介します。
欧州文化首都2025:ケムニッツ近郊の屋外彫刻展示「パープルパス」
2025年はドイツ東部の都市ケムニッツが欧州文化首都に選ばれて、様々な文化的なイベントが行われました。欧州文化首都とは EUが開催するイベントのことで、EU諸国の中から都市が選ばれ、様々な文化的なイベントを開催します。ケムニッツは2025年にその開催都市に選ばれており、その一環でケムニッツ周辺都市では多くの屋外彫刻が設置されたのです。
それは「パープルパス (PURPLE PATH) 」と呼ばれるもので、Jeppe HeinやMonika Sosnowskaなど多くの現代アートのアーティストが彫刻作品を設置しています。今回紹介するジェームズ・タレルの作品の展示施設も、その一環で設置されることになったのです。

ケムニッツ近郊の街「エルニッツ」
タレルの作品が設置されるのは、エルニッツ(Oelsnitz/Erzgeb)と呼ばれる町です。エルニッツはケムニッツの南西約20キロに位置しており、鉱山の町として栄えていました。第二次世界大戦後、町にあった炭鉱は「カール・リプクネヒト炭鉱」と名付けられ、町の産業として重要な役割を果たしていましたのです。
しかし70年代にその役割を終えると、鉱山の歴史を伝える博物館として生まれ変わり、そして2025年には「KohleWelt(コーレヴェルト)」という博物館として再オープンしたのです。今回タレルの作品が設置されるのは、そんな博物館の一角です。
この場所にあった18番ホールを一旦解体して、タレルの作品を設置することを踏まえて構築し直しています。そして、建物内で作品を体験できるようにしているのです。

ジェームズ・タレル
今回エルニッツに作品を設置したジェームズ・タレルですが、その名前を聞いたことがある人は少なくないでしょう。アメリカ出身のタレルは光を用いたアーティストして知られており、知覚を意識させる作品を制作しています。
日本にも多くの作品が展示されており、特に瀬戸内の島にある地中美術館や、金沢21世紀美術館に設置された作品で有名です。ドイツでも、ベルリンの墓地の礼拝堂に作品が設置されており、そこでは光を使ったプログラムで知覚感覚を揺らがせる体験を楽しむことができるのです。

特別な空間体験:ジェームズ・タレル「Beyond Horizons 2025」
エルニッツに設置された新作は『Beyond Horizons 2025』と名付けられました。会場となる「18番ホール」の内部は絶え間なく変化する光で満たされ、訪れる人々を包み込みます。赤から青、そして紫へと移ろう光の中で、壁、床、天井の境界は消失し、鑑賞者の空間認識は大きく揺さぶられます。
こうしたタレルの表現は、鉱山の町エルニッツにおいて特別な意味を持ちます。かつて深い暗闇の底で働いた炭坑夫にとって、光は何よりも渇望されたものであり、過酷な非日常の中で唯一の安らぎを感じさせる存在でした。タレルの生み出す光の世界は、当時の炭坑夫たちが抱いた光への祈りや切望を、現代の私たちに追体験させてくれるかもしれません。

作品鑑賞には予約が必須
この作品は没入型の体験作品であるため、一度に入場できるのはわずか10名に制限されています。鑑賞は30分刻みの完全予約制(タイムスロット制)となっており、公式サイトでの事前予約が必須です。
現在、翌月分のタイムスロットまで予約が可能ですが、当日現地でのチケット販売は一切行われません。 予約なしで訪問しても作品を体験することはできないため、訪問を計画される際は必ず事前に予約を済ませるようにしてください。

現代アートファンには必見の場所
エルニッツに誕生したタレルの新作は単に知覚を惑わせるだけでなく、この町の炭鉱の歴史を呼び覚まし、かつての炭坑夫たちの思いを繋ぐものとなっています。
こうした体験型の作品は、難解な美術理論を知らなくても、誰もが自身の身体を通じて感じ取れるものです。現代アートが苦手な人から熱心なファンまで、すべての人におすすめできる作品です。
アートを目的にドイツを訪れるなら、今、エルニッツは必見の場所と言えるでしょう。ぜひ足を運んで、タレルの光の世界を体感してみてください。

コールヴェルト/ KohleWelt
アドレス:Pflockenstraße 28, 09376 Oelsnitz/Erzgebirge
最寄駅:ドイツ鉄道「Neuoelsnitz」駅
開館時間:10〜17時
休館日:月曜(祝日を除く)
入館料;タレルの作品 / 15ユーロ、コールヴェルト(博物館)/ 12ユーロ
Web-site:ジェームズ・タレルの展示、コールヴェルト(博物館)
ベルリンでは、墓地でタレルの作品を体験することができます。










