ベルナウのバウハウス
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ベルリン近郊の街に残るバウハウスの建物 「 全ドイツ労働組合総連合(ADGB)の連合学校本部棟 」

建築が好きな人であれば、ドイツと言えばバウハウスを思い出す人が多いでしょう。バウハウスは今からおよそ90年程前に美術やデザインを教えていた学校ですが、その先進的な美術教育は今も大きな影響を与え続けています。

そんなバウハウスには多くの建築家が関わっており、彼らが手がけた建物はバウハウスの思想を体現しているものもあり、その一部は世界遺産にも登録されているのです。今回紹介したいのは、その一つである全ドイツ労働組合総連合(ADGB)の連合学校本部棟です。建物の歴史や特徴などについて紹介したいと思います。

バウハウスとは

バウハウス

バウハウスが誕生したのは1919年のこと。設立の際に校舎を構えたのはドイツ中部の都市ヴァイマールでした。1925年に近郊の都市デッサウに移転して、バウハウスのシンボルとも言えるモダンな校舎を建てています。しかしナチスの台頭によって先鋭的な考えは危険視されることになり、1932年にベルリンへと移転して、その翌年に閉校したのです。

このように活動期間は僅か十数年にも関わらず、今も歴史に名を残すのはその先進性にあるでしょう。建築家のヴァルター・グロピウスや、画家のリオネル・ファイニンガー、ワシリー・カンディンスキー、パウル・クレーといった著名な人物が新しい教育を行っていました。そこでは今までの美術の考え方ではなく、合理性や機能性を押し進めた教育を行っていたのです。

バウハウスと建築の密接な繋がり

バウハウス

バウハウスには多くの人が関わっていますが、著名な建築家もその教育に携わっています。初代校長のヴァルター・グロピウス、2代目のハンネス・マイヤー、3代目のミース・ファン・デル・ローエと校長はいずれも建築家であることからも、バウハウスと建築の繋がりがわかるでしょう。

関係者の手掛けた建物は合理性や機能性を追求したものが多いため、バウハウスの思想が体現されていると言えるかもしれません。その代表はヴァルター・グロピウスが手掛けたデッサウのバウハウス校舎です。建物は装飾を排したシンプルなもの。ガラス窓が外壁を覆うように広がり、建物内は明るく広さを感じられる空間になっています。今も古びることのないデザインはバウハウスの重要性を今に伝えているのです。

バウハウス2代目校長ハンネス・マイヤーが手がけた建物

ベルナウのバウハウス

今回紹介したいのは、2代目の校長のハンネス・マイヤーが手掛けた全ドイツ労働組合総連合の連合学校本部棟です。こちらの建物には多くのバウハウス関係者が携わっており、デッサウの校舎に並ぶバウハウスの重要なプロジェクトとして知られています。

ですが、バウハウス校舎などが1996年に世界遺産に指定された際に、全ドイツ労働組合総連合の連合学校本部棟は世界遺産に指定されませんでした。そのため多くの注目が集まることはなかったのです。しかし2017年に晴れて世界遺産に追加登録されることになり、今では世界遺産に指定されたバウハウスの建物として紹介されているのです。

ベルリン近郊の森の中に建つ建物

ベルナウのバウハウス

今回紹介する建物は、ベルリンの隣町ベルナウ(ベルナウ・バイ・ベルリン)に建てられたものです。建物が位置するのは街から離れた自然豊かな森の中。縦長の傾斜のある敷地に合わせて、場所に寄り添った形の建物が建てられています。

敷地に合わせて縦長に伸びる建物には研修宿泊施設としての役割を果たすため、食堂、ホール、図書館、体育館、宿泊用の部屋などが備わっています。このような建物は1930年に完成していますが、シンプルでモダンな外観を見ると、機能性や合理性を考えたバウハウスの先進的な考えを感じとれるかもしれません。

建物の特徴である明るい廊下

ベルナウのバウハウス

こちらの建物で大きな特徴となっているのは入り口と各スペースを繋ぐ長く伸びた廊下です。廊下部分は地形に合わせているため傾斜があり、それはスロープのような空間と言えるかもしれません。廊下の片面はガラス張りとなっており、屋内とは思えないような空間が生み出されています。

また外に広がる風景や太陽光を最大限に取り込んでいるため、明るさを感じられる一方で、圧迫感を感じることはありません。このような多くのメリットを生み出すスペースは、この建物の最大の特徴と言えるでしょう。

明るく開放的な食堂

ベルナウのバウハウス

他に特徴に挙げられるのは食堂です。こちらでは壁だけでなく天井にもガラスを取り入れており、室内に多くの太陽光を取り込んでいます。そのため屋内にいることを忘れてしまうような明るさを感じられます。ガラスを使った採光は場合によっては空間を温室に変えてしまうこともありますが、ここでは太陽の動きなどが、予め調査した上で取り付けられています。

こうした明るく快適な空間は当時としては非常にモダンであり、建設から90年以上経った今でも古さを感じることは全くないでしょう。そしてバウハウスの思想の先進性に驚かされるのです。

訪れる際に気を付けたいこと

ベルナウのバウハウス

このように魅力的なADGBの連合学校本部棟の建物ですが、現在でも研修施設として利用されており、館内を自由に訪れることができません。館内を見学するには週末に開催されるガイドツアーに参加する必要があります。

ですが、ガイドツアーに参加できなくても見学できるものがあります。それは2022年にオープンした展示施設(ビジターセンター)です。そこでは建物の歴史を始め、使用されている素材などが紹介されています。

そのため実際に訪れて外観を見るだけでなく、展示などを楽しむことができるでしょう。決して訪れやすい場所ではありませんが、バウハウスを語る上で見逃せない場所なので、是非訪れてみてください。

ベルリンでバウハウス関連やモダニズム関連の建物をご案内します

ベルリン建築個人ガイド

デッサウのバウハウスは、こちらの記事で紹介しています。

全ドイツ労働組合総連合(ADGB)の連合学校本部棟

アドレス:Hans-Wittwer-Straße 1, 16321 Bernau bei Berlin

ガイドツアー:11:30 、14:30(土日)

ガイドツアー料金:10ユーロ

Website : 全ドイツ労働組合総連合(ADGB)の連合学校本部棟

(2024年6月確認)

展示施設(ビジターセンター)

アドレス:Hans-Wittwer-Straße 1, 16321 Bernau bei Berlin

入場料:無料

開館時間:10〜17時(火〜日)

休館日:月曜日

Website : 全ドイツ労働組合総連合(ADGB)展示施設

(2024年6月確認)

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