ドイツの首都ベルリンには過去の歴史を振り返えれる場所が多くあります。特に第二次世界大戦でのナチスドイツが行った行為について慰霊や展示を行う場所は少なくありません。ただし、そこでは情報を得られるだけで、実際に何が起きたかを実感できるわけではないでしょう。
そこで考えたいのがベルリン近郊にある強制収容所の跡地を訪れること。それはオラニエンベルクにあるザクセンハウゼン強制収容所です。今回はそんなザクセンハウゼン強制収容所について紹介します。
ベルリン近郊の街にあるザクセンハウゼン強制収容所
ザクセンハウゼン強制収容所があるのは、ベルリンの北部にある都市オラニエンブルク。オラニエンブルクはベルリンの中心部から電車で1時間ほどの近郊の街です。強制収容所が位置するのはオラニエンブルクの駅から20分程歩いたところ。
今では敷地の一部に住宅街が迫っており、周辺では、ごく普通の人々の生活が垣間見えます。このような場所に広大な敷地を持ち、多くの人々を強制的に収容していたのです。今現在の風景からはそれを想像することはできないでしょう。
ザクセンハウゼン強制収容所の歴史
オラニエンブルクに強制収容所が設立されたの1933年のこと。当初は現在とは異なり、街の大通りに接する場所に位置していました。1936年に現在の場所にザクセンハウゼン強制収容所が開かれます。そして1945年の終戦までの間、およそ20万人以上の人々がここに収容されたのでした。
こちらの収容所に集められたのは政治犯、ユダヤ人、捕虜、同性愛者などです。何万人もの収容者が、強制労働、飢餓、疫病、虐待などによって命を落としています。また戦争末期には、ソ連軍接近のため他の収容所へと収容者を移動させる「死の行進」が行われ、そこでも多くの人々が殺されたのでした。
広大な敷地での完全管理
ザクセンハウゼン強制収容所があるのは街外れの場所。そこには190ヘクタールもの広大な敷地に収容所が建設されました。三角形の敷地は周囲を壁に覆われ、壁には等間隔で監視塔が建てられました。
敷地内には多くの建物が建てられましたが、それは敷地にある門を中心にして広がるような形となっています。そのため収容所の門からは視界を遮られることなく敷地の奥まで望めるようになっているのです。今では僅かな建物しか残されていませんが、ここでは収容した人々を完全に管理するように収容所が設計されていることに気付かされるでしょう。
人々を欺いた「働けば自由になる」のスローガン
収容所の入り口の門には「Arbeit macht frei」のスローガンが掲げられています。それが意味するのは「働けば自由になる」です。これはアウシュビッツの強制収容所に取り付けられていたことで知られていますが、ナチスが設立した多くの強制収容所に取り付けられており、ここザクセンハウゼン強制収容所も例外ではありませんでした。
収容された人々は掲げられたスローガンとは反対に、自由になることはなく強制労働によって弱り、病にかかって命を落としたのです。スローガンは人々を欺くものですが、そこからも、いかに非人道的なことが行われていたかを理解できるかもしれません。
ユダヤ人を収容した「バラック38」と「バラック39」
ザクセンハウゼン強制収容所には幾つかの建物が残されていたり、再建されています。そのうちの一部である「バラック38」と「バラック39」はユダヤ人を収容する建物でした。こちらでは当時の施設の様子を再現しており、粗末なベットや、トイレ、入浴施設を見ることができます。
ベッドは所狭し並べられ、トイレも壁などななく丸見えです。こうした収容所の様子は、収容された人々が人間として扱われておらず、劣悪な環境に置かれていたかを実感できるかもしれません。
医療実験などを行った「医療バラック」
敷地には多くの建物がありますが、その中で印象的なのは「医療バラック」。それはザクセンハウゼン強制収容所で医療用に使われていた建物です。ここでは医療実験の他、強制的な不妊手術、去勢なども行われていました。「医療バラック」では、当時行われていた医療実験に関しての展示を行っています。
非常に多くの情報がありますが、英語やドイツ語で書かれているため、全てを理解するのは簡単でないでしょう。しかし、「医療バラック」の横には遺体安置所を備えた「病理解剖棟」があります。そこでは解剖用の台が置かれており、当時の様子を簡単に想像できるはずです。
ザクセンハウゼン強制収容所に残る火葬施設の跡
敷地の端には他の建物とは異なる外観のものが建てられています。それは強制収容所にあった火葬施設の跡。破壊されたものを見せる場所で、再建されることなくそのままとなっています。ここにはシャワー室と見せかけたガス室もありました。
強制収容所の中でも最も恐ろしい場所には、崩れ落ちた人を支える二人の人物の彫像が立てられています。それは、ここで命を落とした人々に捧げられた慰霊碑です。今でも多くの花が手向けられており、同じ悲劇を繰り返していてはいけないことを強く考えさせられるでしょう。
恐怖と悲劇を実感できる場所、ザクセンハウゼン強制収容所
旅行としてベルリンを訪れた場合、楽しい思い出を作りたい人は多いでしょう。ですが、旅行は新しいことを知る機会にもなります。もし歴史に興味があり、ドイツで何が行われていたかを実感したいのであれば、ザクセンハウゼン強制収容所を訪れてみてくさい。強制収容所を訪れれば、ここで行われていたことは恐ろしいもので、それを繰り返していけないことを実感できるはずです。
ベルリンにはホロコーストやユダヤ文化を紹介するベルリン・ユダヤ博物館があります。そこでもホロコーストについて知ることができるので、合わせて訪れると良いと思います。そんなベルリン・ユダヤ博物館については、こちらの記事で紹介しています。
ザクセンハウゼン強制収容所 / Konzentrationslager Sachsenhausen
アドレス: Str. d. Nationen 22, 16515 Oranienburg
入場料: 無料
開館時間(屋外展示): 8:30 〜 18:00 (3月15日〜10月14日)、8:30 〜 16:30(10月15日〜3月14日)、
休館日:無し
Web-Site : ザクセンハウゼン強制収容所
(2024年5月確認)