ドイツと言えば、現代アートを思い浮かべる人も多いでしょう。ドイツではゲルハルト・リヒターやヨーゼフ・ボイスなど多くの重要な現代アートのアーティストを輩出してきました。
それだけでなく大規模な国際展覧会であるドクメンタのような重要な展覧会も開催しています。そして首都ベルリンでは現代アートの展示スペースが多くあり、ドイツでは現代アートが身近な文化として根付いているのです。
そのためドイツを訪れるなら、現代アートの展示を鑑賞したいと考える人も多いでしょう。そこで、こちらの記事ではドイツにある現代アートを専門的に展示する美術館を紹介したいと思います。
KW
ベルリンの中心部にあるKWはドイツの現代アートの美術館として最も重要な美術館と言われています。美術館が設立されたのはベルリンの壁が崩壊した後で、当時は旧東側には多くの空き家があり、若者やアーティストが集まっていたのです。1991年に学生が中心となって美術館KWは設立され、ベルリンの壁崩壊後のベルリンの現代アートの中心地となります。
またKWの設立者はベルリンで開催される大規模国際展ベルリン・ビエンナーレも設立しており、KWはビエンナーレの展示会場の一つとしても利用されています。そのためKWはドイツで現代アートをチェックするのであれば、絶対に見逃せない場所となのです。

KWの特徴ですが、建物に組み込まれた作品を除いて常設展示作品はありません。展示は定期的に開催される企画展となっています。一般的な美術館であれば、大御所など世界的に知られているアーティストの展示が多くなります。そのため現代アートと言っても、今現在のアートの動きを感じにくいかもしれません。
しかしKWでは現在活躍する若手アーティストを展示するだけでなく、歴史に埋もれた重要なアーティストを現代の文脈で取り上げるなど、今起きている現代アートの動きを感じられるような場所となっています。

2年に1度開催されるベルリン・ビエンナーレの開催の点で、KWの重要性を理解することができるでしょう。ドイツで最も重要な現代アートの展覧会はドクメンタですが、本ビエンナーレは、それに次ぐ重要な展覧会と言われています。
そんなビエンナーレは2年に一度開催されており、ドクメンタに比べれば、訪れやすくなっています。また短い周期で世界で起きているアートの動きを感じることができるでしょう。このようなことからドイツで現代アートをチェックするなら、KWは見逃すことができないのです。
KW (KW Institute for Contemporary Art)
アドレス: Auguststraße 69, 10117 Berlin
アクセス方法 : Sバーン「Oranienburger Straße」駅
開館時間: 11〜19時、11〜21時/木曜
閉館日: 火曜
入館料:10ユーロ
Web-page: KW
(2025年1月確認)
ハンブルガーバンホフ現代美術館
ハンブルガーバンホフ現代美術館はベルリンにある美術館で、多くの重要な現代アートのコレクションを展示する美術館です。1996年に開館しており、国立の美術館として展示を行っています。
そんな美術館に利用されている建物は19世紀半ばに建てられた駅舎です。美術館の名前となっているのは、駅舎がベルリンとハンブルク路線のために使われていたためで、そのためベルリンにあるにも関わらずハンブルクの名前が入っているのです。

ハンブルガーバンホフ現代美術館の特徴は広大な展示空間で開催される巨大な作品の展示です。美術館の主要な展示スペースは駅のプラットホームだった場所です。そのため天井が高く、広々としているのです。そんな展示スペースであるからこそ、規格外のサイズの作品を見ることができるのです。
今までにはトマス・サラセーノによる展示空間に吊り下げられた巨大なバルーンの作品や、カタリーナ・グロッセによる立体的な絵画の作品が展示されてきました。ここでは通常の美術館では見られないような特別な作品を鑑賞できることは間違いないでしょう。

他の特徴として挙げたいのは常設展示です。常設展示では美術館のコレクションが展示されており、その中にはドイツの現代アートにとって重要なアーティストが含まれています。例えば、ヨーゼフ・ボイスやアンゼルム・キーファーなど戦後ドイツを代表するアーティストの作品です。特にボイスの作品は充実しており、ボイスの全体像を掴めるかもしれません。
またドイツ人アーティストばかりでなく、アンディ・ウォーホールの作品などもあり、国際的に重要なアーティストの作品を鑑賞することができるのです。そのため本美術館では充実したコレクションの展示を楽しむことができるでしょう。
ハンブルガーバンホフ現代美術館 / Hamburger Bahnhof – Nationalgalerie der Gegenwart
アドレス: Invalidenstraße 50 – 51, 10557 Berlin
アクセス方法 : Sバーン、地下鉄U5「Berlin Hauptbahnhof」駅
開館時間: 10〜18時、10〜20時/木曜、11〜18時/土〜日
閉館日: 月曜
入館料:16ユーロ(特別展込み)
Website: ハンブルガーバンホフ現代美術館
(2025年1月確認)
ハンブルガーバンホフ現代美術館については、こちらの記事で紹介しています。
Haus der Kunst
ドイツ南部にあるミュンヘンはベルリン、ハンブルクに次ぐドイツ三番目の人口を誇る大都市です。そんな都市にはアルテ・ピナコテークといったドイツを代表する古典絵画のコレクションを所有する美術館があります。その一方でミュンヘンにはドイツを代表するような現代アートの美術館もあるのです。それはHaus der Kunst (芸術の家)です。
建物に利用されているのは1933年から37年にかけて建てられたナチス建築を代表するものです。1937年より美術館として使われており、ナチス時代にはナチスの考えを体現するような美術作品を展示するなど、プロパガンダの場として利用されてきました。その後は展示スペースとして利用され、近年は現代アートに特化した美術館として利用されています。

Haus der Kunstの特徴はその展示です。美術館では常設される展示作品はありません。そのため、企画展示のみを鑑賞することになるのです。企画展は国際色豊かな展示となっており、その内容はディレクターによって左右されます。ディレクターが専門としているテーマが多く取り上げられることになり、それぞれの色が出てくるのです。
ディレクターはドイツ国外から選ばれており、通常ドイツではあまり見られないような展示が多く行われています。そのため世界のアートの動きを感じられる場所と言えるでしょう。

このように展示に大きな影響を与えるディレクターですが、過去にはドクメンタのキュレーションを行ったオクウィ・エンヴェゾーも選ばれています。そしてテートモダンのディレクターを務めたクリス・デルコンなども選ばれており、現代アート界において影響力のある重要な人物がディレクターに選出されているのです。
そのためディレクターとの繋がりから、通常では企画されにくい展示も可能となっています。このような背景からHaus der Kunstだからこそ実現できる展示があり、それを鑑賞することができるのです。
ベルリンのお勧めの現代アートの美術館はこちらで紹介しています。