ベルリン・ビエンナーレ
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2025年開催の第13回ベルリン・ビエンナーレについて

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ベルリンでは2年に1回、ベルリン・ビエンナーレと呼ばれる大規模な現代アートの国際展覧会が開催されます。ベルリンの現代アートで最も重要な美術館であるKW(Kunst Werke)をメイン会場にして、毎回市内にある展示施設や建物を利用して様々な展示を行ってきました。

本ビエンナーレはドイツの首都で開催されるビエンナーレであることから、非常に重要な現代アートの展示と考えられています。2025年はそんなビエンナーレが開催される年です。そこで、こちらの記事では、ベルリンビエンナーレについて簡単に紹介したいと思います。

ベルリン・ビエンナーレの歴史

ベルリンの壁崩壊以降、ベルリンには多くのアーティストが移り住み、新しいアートの動きが生まれる場所となっていました。そんななかで若手アーティストや美術関係者によって設立されたのがKWと呼ばれる展示スペースです。そのKWを中心にして設立されたのがベルリン・ビエンナーレだったのです。

第1回目のビエンナーレが開催されたのが1998年のことでした。以降、ベルリン・ビエンナーレでは、アーティストのMaurizio Cattelanや、のちにドクメンタのディレクターとなるAdam Szymczykがキュレーターを務めるなど、時代を先取りするような新しいスタイルの展示が行われてきたのです。

KW

第13回ベルリン・ビエンナーレの概要

今回のビエンナーレでは、Zasha Colahがキュレーターを務め、アシスタント・キュレーターにはValentina Vivianiが入っています。Zasha Colahはインド出身で、キュレーターとして多くの展示を手がけ、また自由について考えるキュレーターとアーティストのコレクティブの共同設立者でもあります。

ビエンナーレのプレスリリースにも言及されていますが、継続的な抑圧下の芸術的なイマジネーションについて、展覧会や著作で取り上げているそうです。そのため本展でも、こうした文脈が様々な形となって現れているでしょう。

ベルリン・ビエンナーレの企画内容

本ビエンナーレの公式ページにある、キュレーターによる「はじめに」という文章を意訳で訳してみました(詩的なものなので、かなり意訳しています。翻訳家ではないので、厳密のものではありません。)

ベルリンの市街地に多くのキツネが生息していることは、第13回ベルリン・ビエンナーレを、捕捉されにくい性質(fugitivity)として徹底的に考察する出発点となっています。詩人は、都市部のキツネとの遭遇を、その存在に見入ってしまい、時間感覚を変化させるものだと描写しています。心は異質なものと出会っても、連想的な思考の連鎖や偏見へと進むことはありません。この出会いは、人間がキツネと自分たちを重ね合わせるのではなく、むしろ新たな対等な関わりへと誘うものです。

本ビエンナーレの提案は、合法的な暴力に向き合う際に、美術作品が独自の法を定める文化的な力を持つものとして「捕捉されにくい性質」を探究することです。不当な法を横切るキツネのような振る舞い、すなわちこの違法性は、冗談を生み出す想像力の中に現れたり、美術作品のゆらめきのなかに垣間見えたりするのです。

キュレーションの基礎として、キツネのような振る舞いは、企画進行中のビエンナーレにおいて二つのレベルで機能しています。

まず第一に、マイノリティという概念を完全に排除するという考えに、ゆっくりと到達することです。先住民族、遊牧民、ダリット(不可触民)とアーティストを定義し、マイノリティを囲い込むようなアイデンティティ・ラベルに用心すること。これらは最終的にマイノリティ同士を対立させ、均質な多数派という誤った幻想に対して、彼らが決して対等に扱われることを許しません

そうではなく、本ビエンナーレでは尊厳の道筋の回復に根ざした出会いを求めています。もしそれが当たり前のように聞こえるのなら、独自の経験を持つ人々が、自分自身の言葉で自由に語るという声の平等が、世界中の様々なアートの文脈でどれほどまでにひどく抑圧されてきたかを思い出せば、その重要性が理解できるはずです。

第二に、美術作品とは何か、どこで、どんな条件で成立するかという事前の決定(ア・プリオリ)に抗うことです。むしろ馴染みのある想像力から生まれる美術作品であっても、その不透明さや判読不能な性質に依拠し、私たち自身の「非識字性」(つまり、作品を完全に理解しきれないこと)を出発点とするのです。」

13th Berlin Biennale / Premises


上記のキュレーターの文章からわかるように、本展はベルリン市内に生息するキツネが展覧会のスタート地点となっています。公式ページでは「キツネのように振る舞い(foxing)」について説明されており、まず、「マイノリティとしての概念の排除」が挙げられています。

そして第二に、「美術作品の事前の定義への抵抗」が掲げられています。実際に本展の参加アーティストが開催当日まで明らかにならず、企画コンセプトも詩的なものであることから、本展が規格に収まらないように考えられていることがわかるでしょう。

参加アーティスト

展覧会が始まった後に、参加アーティストのリストが公開されています。全体的な印象としては、キュレーターの出身地も関連してか、アジア関連のアーティストが多いです。

日本からは、宮本和子、小沢剛、嶋田美子が参加しています。全ての会場を見ているわけではないので何とも言えませんが、政治的なアーティストが多い一方で、政治を取り上げつつも詩的な形で取り上げるアーティストの存在が印象的でした。

いずれにせよ多くの会場を見た印象としては、とてもポリティカルな展示だと思います。

展示会場

  • KW (KW Institute for Contemporary Art )
  • ハンブルガーバンホフ現代美術館
  • ゾフィーエンザーレ
  • レールテ通りの旧裁判所

ビエンナーレの会場ですが、4会場が選ばれています。メイン会場となっているKW、そして美術館であるハンブルガーバンホフ現代美術館は一般的な展示会場です。一方で展示施設ではない場所も会場として選ばれてます。それは今回の展示に重要な意味を与えているでしょう。

例えば、レールテ通りの旧裁判所は、共産主義者のKarl Liebknechtを裁いた場所として知られています。またナチスによる軍事裁判も行われていました。もう一つの会場ゾフィーエンザーレは現在パフォーマンスなどで使われる劇場です。ここは労働者の教育施設として使われ、Karl LiebknechtやRosa Luxemburgが演説を行ったことでも知られています。

 なおゾフィーエンザーレとハンブルガーバンホフ現代美術館の展示作品はそれほど多くありません(ただしハンブルガーバンホフ現代美術館では、通常の展示が行われているため、それを見ると時間がかかるでしょう)。その一方でKWとレールテ通りの旧裁判所には多くの作品が展示されています。

第13回ベルリン・ビエンナーレについて

全ての会場を訪れていないため、全体の印象については語れないのですが、ポリティカルな作品が多く、しっかりと情報を読み込まなければ、作品を理解できない可能性が高いです。

また映像作品も多くあり、それを理解するにも英語での情報の読み込みが必要となります。そのため情報を読み取らなければ、今回のビエンナーレや作品の意味を見落とす/読み込めない可能性があるでしょう。その一方で詩的な作品もあるため、全てが強い政治性を持たせたものではありません。

いずれにせよ旧裁判所が会場として使われていること、会場にはKarl LiebknechtやRosa Luxemburgなどの革命家に繋がりがある場所が選ばれていることは、ビエンナーレの企画に重要な意味を与えています。それを踏まえて展示作品を鑑賞してみると良いでしょう。

第13回ベルリン・ビエンナーレ / 13th Berlin Biennale

会期:2025年6月14日〜9月14日

入場料:16ユーロ

公式ページ第13回ベルリン・ビエンナーレ

会場/開館時間

KW (KW Institute for Contemporary Art ) : Auguststraße 69, 10117 Berlin

水曜日〜月曜日:11〜19時

木曜日:11〜21時

火曜日:休館

ハンブルガーバンホフ現代美術館 : Invalidenstraße 50, 10557 Berlin

火曜日、水曜日、金曜日:10時〜18時

木曜日:10時〜20時

土曜日、日曜日:11時〜18時

月曜日:休館

ゾフィーエンザーレ : Sophienstraße 18, 10178 Berlin

水曜日〜月曜日:11時〜19時

火曜日:休館

(ゾフィーエンザーレのみ入場無料)

レールテ通りの旧裁判所 : Lehrter Straße 60, 10557 Berlin

水曜日〜月曜日:11時〜19時

火曜日:休館

ベルリンの現代アートを見せる美術館については、こちらの記事で紹介しています。

ベルリンの現代アートを展示するギャラリーについては、こちらの記事で紹介しています。

ドイツのお勧めの現代アートの美術館は、こちらの記事で紹介しています。

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