バウハウスは20世紀前半にドイツにあった美術学校のことです。僅かな活動期間にも関わらず、その教育の革新性は、今なおデザインや建築で大きな影響を与えています。そのためバウハウスと関わりのある都市では、世界遺産に登録された建物があり、多くの人が訪れる場所となっています。
このような文化的な意味で、そして観光的な意味で重要なバウハウスですが、幾つかの都市に建物が建てられており、どこを訪れて良いかわからない人もいるでしょう。そこで、こちらの記事ではバウハウスを訪れる際に、ぜひ訪れてほしい建物を紹介しています。バウハウス訪問の際に、こちらの記事を参考にしてみてください。
ワイマール(ヴァイマール)のバウハウス
バウハウス大学ヴァイマール
まず最初に紹介したいのは、バウハウス生誕の地にあるバウハウスの校舎として利用されていた建物です。1919年にバウハウスは、ドイツ東部の街ワイマール(ヴァイマール)で設立されました。二つの教育施設を統合する形でバウハウスは誕生したのですが、その際に前身の教育施設の建物を利用することにしたのです。それが現在のバウハウス大学ヴァイマールの校舎です。
建物を手がけたのは建築家アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデで、彼はアール・ヌーヴォーやユーゲント・シュティールと呼ばれるデザイン・建築様式を取り入れた建築家としても知られています。
バウハウス大学にあるバウハウスの校舎は2棟あり、いずれも20世紀初頭に建てられたものです。建物は隣合う形で建てられており、合わせて訪れることができます。このような建物の特徴となるのは、控えめに抑えられた装飾とシンプルな空間の組み合わせです。
バウハウスと言えば、合理主義や機能主義が強く押し出されており、装飾が目立つことはありません。しかし、こちらの建物はバウハウス以前の時代のものであり、過渡期の建築の姿を見ることができるでしょう。
バウハウス大学ヴァイマールの校舎の最大の特徴となるのは2棟の建物内にある螺旋階段でしょう。緩やかな曲線を描く階段はアール・ヌーヴォースタイルとなっており、シンプルな空間に美しさを加えています。
2棟の建物のうち1棟の螺旋階段には、バウハウスの教員だったオスカー・シュレンマーによる壁画描かれています。それはバウハウスの思想に通ずるモダンなものであるため、そこからバウハウスの考えを感じ取ることができるかもしれません。
バウハウス大学ヴァイマール / Bauhaus-Universität Weimar
設計 : アンリ・ヴァン・デ・ヴェルデ
建築期間 : 1904〜1911年(本部棟)、1905〜1906年(ヴァン・デ・ヴェルデ棟)
アドレス:Geschwister-Scholl-Straße 7, 99423 Weimar
開館時間:ー (ガイドツアーで見学可能)
Website : バウハウス大学ヴァイマール
(2025年1月確認)
バウハウス大学ヴァイマールについては、こちらの記事で紹介しています。
ハウス・アム・ホルン
バウハウスのヴァイマールの活動期間は、1919年からデッサウへの移転の1925年と僅かな期間でした。そのためヴァイマールに多くのバウハウスの足跡が残されているわけではありません。そのなかで最もバウハウスらしいものは、1923年に建てられたハウス・アム・ホルンでしょう。
それはヴァイマール郊外の丘の上に建てられたバウハウスの思想を結集したような特徴的な建物となっています。
1923年バウハウスでは、その活動成果を示す形で実験的な住宅を建てています。それが、ハウス・アム・ホルンです。建物を手がけたのはバウハウスの教師ゲオルク・ムッヘでした。建築家アドルフ・ゾンマーフェルトやヴァルター・グロピウス事務所が支援を行い、実験的な住宅を実現させることに成功したのです。
建物内にはバウハウスの関係者や学生のデザインする家具なども設置されており、バウハウスが考える生活空間が形となっています。
建物は背の高い居間空間を中心にして、その周りを取り囲むように、寝室、浴室、トイレ、キッチンなどの部屋が配置されています。居間からはいずれの部屋にもドア1枚で移動できるようになっており、機能的かつ合理的な空間といえるでしょう。
ここでは無駄のない住空間が実現しているのです。このようなバウハウスの理想とする空間が生み出されているため、見逃すことができない建物なのです。
ハウス・アム・ホルン / Haus Am Horn
設計 : ゲオルク・ムッヘで、アドルフ・ゾンマーフェルト
建築期間 : 1923年
アドレス:Am Horn 61, 99425 Weimar
開館時間:2025年03月21日より11月1日まで開館 / 冬期休館 / 10:00 〜 18:00
休館日:火曜日
入場料:5ユーロ
Website : ハウス・アム・ホルン
(注)入場者数を限定しているため、予約推奨。予約ページはこちら。
(2025年1月確認)
デッサウのバウハウス
バウハウス・デッサウの校舎
バウハウスはヴァイマールでの状況の変化により、1925年にドイツ東部の都市デッサウへ移転することになります。1932年にベルリンへと再移転することになるのですが、デッサウではバウハウスは短いながらも黄金期を迎えているのです。
当地では、教官や関係者が、公共の建物や集合住宅などの建物を手がけているのです。その一つがバウハウスのシンボルとも言えるデッサウの校舎です。
デッサウの校舎を手がけたのは、バウハウスの初代校長であり、モダニズム建築の巨匠ヴァルター・グロピウスです。校舎は、工房、授業棟、学生寮などの異なる役割を持つ建物が、接続された形となっています。
建物の中心となる渡り廊下には、校長室が配置されており、一つの建物が各役割を担う部分から構成される形となっています。外観からはシンプルに見える建物ですが、非常に機能的な建物となっているのです。
建物の外観で大きな特徴となるのは壁全体を覆うガラス窓です。工房棟の壁はガラス窓なっており、建物に軽やかな印象を与えてくれます。そんなガラス窓は外光を多く取り込めることにより、建物内は明るくなっているのです。そのため室内にいるとは思えないような明るさを感じることができるでしょう。
こちらの校舎はおよそ100年以上の建物ですが、現代の建物と通ずる点が多く、その斬新さやモダンさを実感できるものとなっています。
バウハウス・デッサウの校舎 / Bauhausgebäude
設計: ヴァルター・グロピウス
建築期間: 1925〜1926年
アドレス: Gropiusallee 38, 06846 Dessau-Roßlau
開館時間: 10〜17時
休館日: 無し/ 3〜10月、月曜 / 11〜2月
入館料: 10ユーロ
Web-Page: バウハウス・デッサウの校舎
(2025年1月確認)
デッサウの校舎については、こちらの記事で紹介しています。
マイスターハウス
デッサウでバウハウスの校舎と共に必ず訪れておきたいのが、マイスターハウスと呼ばれる教官が住んでいた建物です。こちらの建物が位置するのは校舎から10分ほど歩いた場所です。マイスターハウスの建物は校長の住んでいた1軒と、教官が住んでいた3軒の合計4軒のものです。
ただし第二次世界大戦によって校長の住んでいた建物と、1棟の半分が大きく損傷しており、現在は現代的なスタイルで再建された建物に置き変わっています。
教官が住んでいた建物は、いずれも2戸の住宅が組み合わされた1軒の集合住宅となっています。教官は画家や建築家が住んでいたことから、建物内にはアトリエとなる大きなガラス窓を取り付けた背の高い部屋もあります。
また各建物はシンプルかつ機能的なものとなっていますが、それだけでなくテラスやバルコニーなどもあり、魅力的な住空間を実現しています。
このようなマイスターハウスですが、その建物以外にも見所があります。建物に住んでいた教官には、カンディンスキーやクレーといった画家もいました。彼らは建物内の壁を自分好みの色に塗っており、現在でも当時の色が残されています。
建物自体はシンプルなものとなっていますが、その空間が色付けられることで、個性ある印象的な空間へと生まれ変わっているのです。
マイスターハウス(マイスターホイザー)/ Meisterhäuser
設計: ヴァルター・グロピウス
建築期間: 1925〜1926年
アドレス: Ebertallee 59–71, 06846 Dessau-Roßlau
入場料: 10ユーロ
開館時間: 10〜17時
休館日: 無し/ 3〜10月、月曜 / 11〜2月
Website : マイスターハウス
(2025年1月確認)
マイスターハウスについては、こちらの記事で紹介しています。
ベルナウのバウハウス関連の建物
全ドイツ労働組合総連合(ADGB)の連合学校本部棟 」
バウハウスの校舎のあった都市以外に建てられて、世界遺産に指定されたのが、こちらの建物です。建物が位置するのはドイツ北部、ベルリンの近郊に町ベルナウです。
建物はバウハウス2代目の校長であるハンネス・マイヤーによって建てられた組合の宿泊研修施設です。森の中にある緩やかな傾斜のある場所に建てられており、そんな周辺環境を生かしたものとなっています。
1930年完成したこちらの建物は、デッサウのバウハウス校舎建築の経験を生かしたものとなりました。デッサウの校舎は壁面をガラス窓で覆うことで、明るい室内空間を実現しました。しかし、夏は室内の気温が上がり、温室のような状態となってしまったのです。
そのような苦い経験から、こちらの建物ではガラス窓を多用しつつも、その位置を考えて、明るくも快適な空間を実現しているのです。
このように明るい空間ですが、ガラス窓が果たす役割は外光に取り込みだけではありません。ガラス窓は周辺に広がる美しい自然を取り込んでおり、明るく開放感のある空間を生み出しているのです。
そのため単なる機能的な空間に留まらず、周辺環境を生かした美しい建築空間となっているのです。
全ドイツ労働組合総連合(ADGB)の連合学校本部棟
設計: ハンネス・マイヤー
建築期間: 1928〜1930年
アドレス:Hans-Wittwer-Straße 1, 16321 Bernau bei Berlin
ガイドツアー:11:30 、14:30(土日)
ガイドツアー料金:10ユーロ
Website : 全ドイツ労働組合総連合(ADGB)の連合学校本部棟
(2025年1月確認)
全ドイツ労働組合総連合(ADGB)の連合学校本部棟については、こちらの記事で紹介しています。
ベルリンでバウハウス関連やモダニズム関連の建物をご案内します