ベルリンの世界遺産と言えば、何を思い浮かべるでしょうか。多くの人は博物館や美術館が集まるエリア「博物館島」をイメージするでしょう。また「ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群 」の煌びやかな宮殿を思い浮かべる人がいるかもしれません。
ですが、忘れてはいけないのは「ベルリンのモダニズム集合住宅群」です。20世紀初頭に建てられたこれらの住宅では市民が豊かな暮らしを送ることを可能にして、後世の建築に大きな影響を与えました。今回はそんな世界遺産に指定された集合住宅を紹介したいと思います。
第一次世界大戦が生み出した住宅不足
「ベルリンのモダニズム集合住宅群」ですが、ベルリンで集合住宅が建てられた背景を理解すると、世界遺産に指定された理由がわかるかもしれません。指定された集合住宅の多くが、1920年代から1930年代に建てられています。
その理由は1914年に始まり、1918年に終結した第一次世界大戦にありました。ドイツは第一次世界大戦に参戦していますが、敗戦が人々の暮らしに大きな影響を与えます。敗戦によって仕事が無くなり失業者が増加したため、人々は仕事を求めて大都市に集まったのです。そして都市部に人口が集中することで住宅不足が起きたのでした。
ベルリンのモダニズム集合住宅群が解決した住環境の改善
1920年代のベルリンでは地方から人々が流入することで10万戸の住宅が不足していたそうです。こうした人口の集中は住環境の悪化を生み出していました。そこで求められたのが集合住宅だったのです。ここで重要なのは、住まい、つまり集合住宅だけではありません。それだけでなく、そこでの暮らし、つまり住環境が重要だったのです。
世界遺産に登録されている集合住宅は、住宅不足の解消と住環境の改善が考えられています。それは後の集合住宅のありかたを定め、そのため後世の建築に大きな影響を与えたのです。
世界遺産に登録されている6ヶ所の集合住宅
このような「ベルリンのモダニズム集合住宅群」ですが、世界遺産に登録されているのはベルリン市内にある6カ所の集合住宅です。1910年代に建てられたのは「ガルテンシュタット・ファルケンベルク」。
これ以外は1920年代から1930年代に建てられた「ジードルング・シラーパルク」、「グロースジードルング・ブリッツ」、「ヴォーンシュタット・カール・レギーン」、「ヴァイセ・シュタット」、「グロースジードルング・ジーメンスシュタット」です。いずれも複数の建物が建つ住宅地であるため、敷地の取得が簡単だった街の中心から外れた郊外に建てられています。
ブルーノ・タウトが手がけた自然が身近に感じられる集合住宅
6カ所の住宅の中でも特に有名なのは「グロースジードルング・ブリッツ」かもしれません。手がけたのは、日本に滞在して桂離宮などの日本建築を海外に紹介したブルーノ・タウトです。集合住宅の一つは「ホッフアイゼンジードルング」と呼ばれる建物で、中庭の池を取り囲むように馬の蹄の形をした集合住宅です。
こちらでは中庭部分が住民の憩いの場となり、また自然を楽しめる場所となっています。それだけでなく、個別の庭やバルコニーなどが取り付けられた住まいもあり、それによって豊かな暮らしを実現しているのです。
ベルリン観光に世界遺産のベルリンのモダニズム集合住宅群を訪れてみよう
世界遺産と言うと、風光明媚な風景や、印象的な建物や空間を思い浮かべるでしょう。ここベルリンで登録されているのは集合住宅です。それは一見すると、日本にもありそうな普通の建物のように見えるかもしれません。ですが、その歴史的な意味を考えると、後世に大きな影響を与えて、建築のあり方を変えたか重要な建築であることが理解できるでしょう。
もしベルリンを訪れるのであれば、多くの人が知っている博物館島だけでなく、こうした集合住宅を訪れてみてはどうでしょうか。きっと住まいやそこでの暮らしを考えるきっかけになるかもしれません。
ベルリンのモダニズム集合住宅群 / Siedlungen der Moderne
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