ドイツの首都は第二次世界大戦の記憶が多く残されている街です。例えば、博物館島のような古い建物が残されている場所を訪れると、建物に銃弾の跡を見つけることができるでしょう。こうした歴史の中で特に忘れてはいけないものがあります。それはナチスがドイツの政権を握っていた時に行われたユダヤ人迫害、ホローコストです。そうしたホローコストに関連した場所がベルリン市内に幾つかあるのです。
今回紹介したいのは虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑(通称、ホロコースト記念碑)です。そこではユダヤ人の苦しみを追体験できるかもしれません。それだけでなく実際に資料などを見て、何が起きたのかを知ることができるでしょう。今回は、そんなホロコースト記念碑について紹介したいと思います。
ブランデンブルク門近くに広がるホロコースト記念碑
ホロコースト記念碑があるのは、市内中心部にあるブランデンブルク門のすぐ近くです。敷地の横には広大な森のような公園ティアガルテンが広がっています。そしてすぐ横にはベルリンの壁が築かれていました。それだけでなく近くにはヒトラーが自殺を遂げた、最後の日々を過ごした場所、総統地下壕もあります。
そんな場所の一角に無数の石碑のような柱が並んでいる場所が、ホロコースト記念碑なのです。敷地に並ぶのは無数の石柱。それは敷地を覆い尽くし、異様な空間を生み出しているのです。そのため何か特別な場所であることは見た瞬間にわかるでしょう。
ホロコーストによって虐殺されたユダヤ人追悼の場
ホロコースト記念碑を手がけたのはアメリカ人の建築家ピーター・アイゼンマン。彼の生み出したのは、2711基ものコンクリート製の石柱を建てられた空間です。石柱はおよそ1メートル x 2.4メートルの四角形の形となっています。その高さは椅子程度のものもあれば、4メートルを越えるものもあり、高さは統一されていません。
そんな石柱は緩やかに高さを変えて設置されているため、石柱の波のような空間が生み出されています。そして、ここではホロコーストによって殺害されたユダヤ人の人々を追悼する場となっているのです。
当時のユダヤ人の心境を感じさせるような石柱の並ぶ空間
ホロコースト記念碑は石柱の森のようになっていますが、石柱の合間は通り抜けられるため、そこへと入り込むことができます。そこに足を踏み入れると不思議な感覚を感じられるでしょう。高く伸びる石柱は空を覆い隠しています。空は石柱によって区切られて小さく見えるだけなのです。そして周りに見えるのは影を生み出す無数の石柱です。そのため方向を見失い、どこにいるのか不安にかられるでしょう。
このような感覚はホロコーストによって迫害されたユダヤ人の先行きの見えない状況を意味しているのかもしれません。ここではユダヤ人に降りかかった出来事を感じさせるような特別な場となっているのです。
地下に広がるホロコーストを伝える展示空間
ホロコースト記念碑はただ特別な体験ができる場所なのではありません。敷地の地下には展示施設があり、ホロコーストに関連する展示が行われているのです。展示されているのは、ホロコーストについての年表や、犠牲となった人々の手紙などの資料。
印象的だったのは犠牲者の数で、国ごとに分けて犠牲者数を壁に表示させています。そこでポーランドやウクライナといった東欧諸国で非常に多くのユダヤ人が殺されたことに驚かされるでしょう。それだけでなく、わかっている犠牲者の名前や、その生年月日を映し出す空間があります。そこでは犠牲者の数だけでなく、犠牲者一人ひとりの姿を思い浮かべることができるはずです。
訪れる際に気を付けておきたいこと
ホロコースト記念碑は殺された人々の追悼施設です。最近問題になっているのは記念碑の敷地ではしゃいで遊ぶ人がいることです。特別な空間であるために子供や若者が走り回ったり、遊びの場として利用することが起きています。これは批判されている行為なので、追悼施設であることを理解した上で、それに合わせた行動を取るように気を付けたほうが良いでしょう。
地下の展示施設は無料で誰もが訪れられる素晴らしい展示スペースです。ただ入場の際にはセキュリティーチェックがあります。そのため荷物の検査や簡単なボディーチェックがあることに気を付けてください。
ホロコーストについては、ベルリンにあるベルリン・ユダヤ博物館でも、多くのことを知ることができます。そんなベルリン・ユダヤ博物館については、こちらの記事で紹介しています。
ホロコースト記念碑 (虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑)/ Denkmal für die ermordeten Juden Europas
アドレス : Cora-Berliner-Straße 1, 10117 Berlin
開館時間 : 地上スペースは常時オープン、展示施設: 10〜18時/火〜日曜
休館日 : 月曜日(展示施設のみ)
入場料 : 無料
最寄駅 : Sバーン及び地下鉄「Potsdamer Platz」駅、Sバーン及び地下鉄「Brandenburger Tor」駅
ホームページ : ホロコースト記念碑
(2024年5月確認)